2008年7月1日火曜日

分数式は必ず積分できる(その2)

5次以上の方程式の一般解が,一般に係数の加減乗除と累乗根で表すことができないというアーベルの定理がネックになって,分母が5次以上の分数式では,分母が因数分解できずに,積分が計算できない気がするが,そんなことはない.
ガウスの「代数学の基本定理」によって,実数係数のすべての多項式は,実数係数の1次式,2次式の積にあらわすことができる(実根のときが1次式,虚根のときが2次式).
このとき,その実数係数を一般に元の式の係数の加減乗除と累乗根の式で表すことができないだけなのである(アーベルの定理).
しかし,ガウスの定理によって存在はするのだから,数値解レベルでいくらでも,任意の精度で近似することが可能で,積分の式は存在する.

たとえば,$\frac{2x^8+x^7+x^6-x^5-x^4+5x^3-6x^2+6x-4}{x^6-4x^5+6x^4-6x^3+3x^2-2x-1}$の積分.(前の記事の分母に1足しただけ)
まずは,分子÷分母の商とあまり.
商は,$2x^2+9x+25$,あまり $57x^5-103x^4+132x^3-61x^2+65x+21$より,
$\hspace{5mm}\frac{2x^8+x^7+x^6-x^5-x^4+5x^3-6x^2+6x-4}{x^6-4x^5+6x^4-6x^3+3x^2-2x-1} \\ \hspace{5mm} = 2x^2+9x+25 +\frac{57x^5-103x^4+132x^3-61x^2+65x+21}{x^6-4x^5+6x^4-6x^3+3x^2-2x-1}$
コンピュータで分母を因数分解すれば,(桁数は,いくらでも任意に増やせるが長くなるので,有効数字3桁まで)
$\hspace{5mm}x^6-4x^5+6x^4-6x^3+3x^2-2x-1 \\ \hspace{5mm} = (x-2.40)(x+0.285)(x^2-0.0495x+0.821)(x^2-1.84x+1.78)$
となるので,部分分数に分けると,
$\hspace{5mm}\frac{57x^5-103x^4+132x^3-61x^2+65x+21}{(x-2.40)(x+0.285)(x^2-0.0495x+0.821)(x^2-1.84x+1.78)}\\ \hspace{5mm} = \frac{51.1}{x-2.40}+\frac{1.08}{x+0.285}+\frac{4.88x-6.09}{x^2-1.84x+1.78}+\frac{-0.0932x-0.0506}{x^2-0.0495x+0.821}$
これを積分して,(手順は前の記事のとおり)
$\hspace{5mm}\int\frac{2x^8+x^7+x^6-x^5-x^4+5x^3-6x^2+6x-4}{x^6-4x^5+6x^4-6x^3+3x^2-2x-1}dx \\ \hspace{5mm} = \frac{2}{3}x^3+\frac{9}{2}x^2+25x \\ \hspace{5mm} + 51.1\log|x-2.40|+1.08\log|x+0.285|\\ \hspace{5mm} +2.44\log(x^2-1.84x+1.78)-1.65\arctan(0.517(2x-1.84))\\ \hspace{5mm} -0.0466\log(x^2-0.0495x+0.821)\\ \hspace{5mm} -0.0584\arctan(0.552(2x-0.0495))$

でもこうなると,もう式の形に意味はなくなる.最初からもとの関数に初期値を与えて,数値積分を行って,グラフを描いたりする方が現実的.

たとえば,線路の緩和曲線や高速道路のカーブに使われるクロソイド曲線
$\hspace{5mm}\left(\int_0^u \cos kt^2\,dt,\ \int_0^u \sin kt^2\,dt\right)$
と積分で表されるが,この積分は初等関数(多項式,分数式,無理式,指数対数,三角逆三角)で表すことができないことがわかっている.初等関数にならなくて も,連続関数の積分はかならず存在する(リーマンの定理)ので,数値的にいくらでも正確に曲線を描くことができ,道路を作ることができる.

高校の数学では,どうしても「答えが閉じた形」つまり,ひとつの完結した式で求まる問題しか扱わないため,「閉じた形がないものは求まらない?」という印象を持たれたしまう.
そもそも,ルートだって,三角関数だって,それが有限の加減乗除で表せないから,√だの sin だのといった記号を用意した.√2なんて「2乗して2になる正の数」といえば済むところに記号を用意したにすぎない.実際に工学で使うのは近似値(ひとよひとよに・・・)であり,そちらの方が世の中で役立つ.

>>積分の記事

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