2006年8月4日金曜日

sin1度の厳密解

sin1ではなくsin1度.

普通は級数展開(マクローリン展開)
\[\sin x=x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}-\frac{x^7}{7!}+\cdots\]
を使えば任意の精度で求まるので,コンピュータで数値計算を行う場合はこの式を使う.(ただし,エクセルなどはCPUに組み込まれた関数を呼び出しており,CPUの関数は CORDIC を用いている.)

たとえば,角度が1(ラジアン)のとき,sin1なら
\[\sin 1=1-\frac{1}{3!}+\frac{1}{5!}-\frac{1}{7!}+\cdots = 0.841470985\]
で あるが,1(ラジアン)は半径と同じ長さの弧長に対する円の中心角なので,それに対する sin1 は代数方程式の解にはならない.(古代ギリシャの3大問題,「円周率と同面積の正方形の作図不可能」に帰着する)したがって,1(ラジアン)の角は,コン パスと定規で作図できない.
60度=π/3=1.04719755 なので,sin 1 は sin60度=0.866025404より少し小さい.

sin1度なら
1度=π/180=0.0174533
なので,sin1度は
\[0.0174533-0.0174533^3/6+0.0174533^5/120-0.0174533^7/5040\]
くらいまでやれば十分である.> google電卓
sin1度としては十分の精度である.> google電卓


1度は,中心角を360等分した大きさなので,sin1度は代数方程式の解になる.
したがって,ここでは敢えて代数方程式を解き,整数の加減乗除と累乗根を用いて厳密解を求めるという,不毛の作業を行ってみる.
流れとしては36度の三角比(sin cos)と30度のそれを使って 6度の cos を求め,半角公式で3度を求め,3倍角公式を逆算して1度にする.
>参考:18°,36°,54°,72°の三角比


$\sin30^\circ=\frac{1}{2}$, $\cos30^\circ=\frac{\sqrt{3}}{2}$, $\sin36^\circ=\frac{\sqrt{10-2\sqrt{5}}}{4}$, $\cos36^\circ=\frac{1+\sqrt{5}}{4}$ を加法定理
\[\cos(\alpha-\beta)=\cos\alpha\cos\beta+\sin\alpha\sin\beta\]
に代入して
$\cos6^\circ=\cos(36^\circ-30^\circ)$
$=\cos36^\circ\cos30^\circ+\sin36^\circ\sin30^\circ$
$=\frac{1+\sqrt{5}}{4}\frac{\sqrt{3}}{2}+\frac{\sqrt{10-2\sqrt{5}}}{4}\frac{1}{2}$
$=\frac{\sqrt{3}+\sqrt{15}+\sqrt{10-2\sqrt{5}}}{8}$

半角公式
$\sin^2\ \frac{\theta}{2}=\frac{1-\cos\theta}{2}$
$\sin\frac{\theta}{2}=\sqrt{\frac{1-\cos\theta}{2}}$
に代入して,
$\sin3^\circ=\sin\frac{6^\circ}{2}=\sqrt{\frac{1-\cos6^\circ}{2}}$
$=\sqrt{\frac{1-\frac{\sqrt{3}+\sqrt{15}+\sqrt{10-2\sqrt{5}}}{8}}{2}}$
$=\frac{1}{4}\sqrt{8-\sqrt{3}-\sqrt{15}-\sqrt{10-2\sqrt{5}}}$
ここまで,加減乗除と平方根しか使わないので,3度はコンパスと定規で作図できる角である.実際,正5角形から作った36度と,正三角形から作った30度を組み合わせて,6度を作り,その半角が3度.

3倍角の公式
\[\sin3\theta=3\sin\theta-4\sin^3\ \theta\]
に代入して,
$\sin3^\circ=\sin3\times1^\circ=3\sin1^\circ-4\sin^3\ 1^\circ$
$\sin1^\circ=x$ と置けば,これは3次方程式
$3x-4x^3=\sin3^\circ$
となり,$\sin1^\circ$ は3次方程式
$-4x^3+3x=\frac{1}{4}\sqrt{8-\sqrt{3}-\sqrt{15}-\sqrt{10-2\sqrt{5}}}$
の解となる.

この3次方程式をカルダノの公式で解くと,実数解が3つ得られる.
なぜなら,$\sin3^\circ=\sin363^\circ=\sin723^\circ=\cdots$ なので,方程式を解くとその角を3等分した,$\sin1^\circ$,$\sin121^\circ$,$\sin241^\circ$が求まる.
3つの解のうち数値が$\sin1^\circ$であるものの厳密解は,
$x=\frac{1}{8}\left((-1+i\sqrt{3})(-2\sqrt{8-\sqrt{3}-\sqrt{15}-\sqrt{10-2\sqrt{5}}}-2i\sqrt{8+\sqrt{3}+\sqrt{15}+\sqrt{10-2\sqrt{5}}})^{\frac{1}{3}}\right.$
$\left.-(1+i\sqrt{3})(-2\sqrt{8-\sqrt{3}-\sqrt{15}-\sqrt{10-2\sqrt{5}}}+2i\sqrt{8+\sqrt{3}+\sqrt{15}+\sqrt{10-2\sqrt{5}}})^{\frac{1}{3}}\right)$
という形となる.
ここで,$i$は虚数単位である.つまりこの実数解は虚数を使わなければ表すことができない「不還元の形」であるが,これが実際に実数であることは,数値計算で確かめられる.> google電卓

たしかに sin1度 に等しい.> google電卓


また,不還元であることは,
$(-1+i\sqrt{3})$, $(1+i\sqrt{3})$
を後ろの3乗根の中に入れてみるとわかる.
$(-1+i\sqrt{3})^3=8$, $(1+i\sqrt{3})^3=-8$
なので,3乗根の中に入れると8倍,-8倍して
$x=\frac{1}{8}\left((-16\sqrt{8-\sqrt{3}-\sqrt{15}-\sqrt{10-2\sqrt{5}}}-16i\sqrt{8+\sqrt{3}+\sqrt{15}+\sqrt{10-2\sqrt{5}}})^{\frac{1}{3}}\right.$
$\left.-(16\sqrt{8-\sqrt{3}-\sqrt{15}-\sqrt{10-2\sqrt{5}}}-16i\sqrt{8+\sqrt{3}+\sqrt{15}+\sqrt{10-2\sqrt{5}}})^{\frac{1}{3}}\right)$
となるが,これで数値計算をすると,虚数がキャンセルできない.> google電卓


sin1度が求まれば,cos=√(1-sin^2),tan=sin/cos より求まるが,コンピュータの発達した現代では,厳密解を求めることは無意味である.

ちなみに,角を3等分(古代ギリシャの3大問題)するときに3次方程式を解いているが,このことがコンパスと定規で任意の角の3等分線を作図できない根拠となる.(「1度」もコンパスと定規で作図できない.)
コンパスと定規で作図できる計算は,長さの加減乗除と平方根,つまり角は和と差と2等分までであり,3乗根が作図できないため角を3等分することができないといえる.
大きな角では,60度の3等分の20度が作図できないことが,以下の本に証明されている.
アルティン (著), 寺田文行(訳)「ガロア理論入門」東京図書 の110ページ
ジョセフ ロットマン (著), 関口 次郎 (訳) 「ガロア理論」シュプリンガー・フェアラーク東京の129ページ
角の3等分


2009/01/27 追記 オイラーの公式でも求めてみた
sin1度の厳密解(オイラーの公式編)
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