2005年12月18日日曜日

馬力とトルクの関係

最近の車のスペックは出力の単位が馬力(PS)ではなくキロワット(kW),トルクの単位がkgf・mからN・mになっている.つまり国際単位に統一している.これは単純に単位の変換なので,定数倍するだけの話である.

PS⇔kW の換算
1PSは75kgの質量を重力に逆らって1mの高さに1秒で持ち上げる仕事率であるから,
1mの高さの位置エネルギーは E=mgh (m:質量,g:重力加速度,h:高さ)より
 E = 75kg×9.8m/s^2×1m = 735J
それを1秒で割れば仕事率
 P = 1PS = 735J÷1s = 735W = 0.735kW
である.
たとえば私のXJR130074kW/8,000rpm というスペックであるので,
 74kW ÷ 0.735(kW/PS) = 100.7 PS ←これが換算式
ということがわかる.
逆に私のGB25030PS/9,000rpm というスペックなので
 30PS × 0.735(kW/PS) = 22.05 kW
である.

N・m⇔kgf・m の換算
1kgfは1kgの質量に対する地球の引力の大きさだから,F=ma より
 F = 1kgf = 1kg×9.8m/s^2 = 9.8N
この力での半径1mの軸トルクは
 T = 1kgf・m = 9.8N×1m = 9.8N・m
である.
たとえばXJR1300は 98.0N・m/6,500rpm というスペックであるので,
 98.0/9.8 = 10kgf・m ←これが換算式
ということがわかる.
逆にGB250は 2.5kgf・m/7,500rpm というスペックなので
 2.5×9.8 = 24.5 N・m
である.

トルクと回転数と出力の関係から,それらは互いに計算できる.
 出力=トルク×回転数×定数
である.つまり同じトルクなら出力は回転数に比例する.

XJR1300 のカタログデータ,トルク 98.0N・m/6,500rpm時の出力を計算する.
6,500rpmは毎秒 6500/60=108.3333回転.その回転数での
 98.0N = 98/9.8 = 10kgf
というトルクは10kgの錘を半径1mの滑車につけて,1秒間に
 2×π×108.3333回転 = 680.6784m
持ち上げることである.
したがって,その仕事率は
 E/t = mgh/t = 10×9.8×680.6784/1 = 66706W=66.706kW
馬力にすれば,1PS は 0.735W だから,
 66.706/0.735=90.7PS
つまりトルク98N・m/6500rpm→出力kW の換算式は
 2×π×(6500/60)×(98/9.8)×9.8
 = 98×6500×0.10471975511965977461542144610932 = 66706W = 66.706kW
GB250のカタログデータのトルク2.5kgf・m/7,500rpm時の出力PS は
 2.5×7500×0.0013962634015954636615389526147909=26.2PS
最大トルク付近は,まだ回転が低くてパワーが低く,この後トルクが小さくなりながらも,回転数が増すことで出力は上がる.

もしトルクが一定の 10kg=98N なら,回転数を x とすれば,
 出力 = 2×π×(x/60)×(98/9.8)×9.8 = 0.1047 × 98x
と出力(W)は回転数に比例する.

XJR1300のカタログデータ 74kW/8,000rpm の出力を出しているときのトルクを計算する.
これは先ほどの計算の逆算である.
出力74kW/8000rpm→トルクN・m の換算式は
 74÷8000÷0.00010471975511965977461542144610932
 = 74÷8000×9549.2965855137201461330258123194
 = 88.33 N・m 88.33/9.8 = 9.0kgf・m
GB250の出力30PS/9000rpm→トルクkgf・m の換算式は
 30÷9000×716.19724391352901095997693592393 = 2.4kgf・m
回転が大きい最大出力付近ではトルクの増加が回転数の増加に反比例している.
これ以上の回転数では,回転数の増加よりトルクの減少が勝り,出力が落ちる.

もし出力が一定の 100kW(=134.102209PS)なら,回転数を x とすれば,
 トルク = 100÷x×9549 N・m
と,トルクは回転数に反比例する.

直流電気モーターは出力が一定である.
つまりほとんどの回転数域でトルクは回転数に反比例する.
100kW の電気モーターなら1000回転で
 100÷1000×9549.2965855137201461330258123194=955N・m
2000回転で
 100÷2000×9549.2965855137201461330258123194=477N・m
6000回転で
 100÷6000×9549.2965855137201461330258123194=159N・m
これは,回転が上がると逆起電力が発生してトルクが落ちていくのである.(電磁気学の初歩)
逆に回転数を落とせばトルクが大きくなるから,この調子なら0回転なら無限大のトルクに計算されてしまうが,もちろんそういうことはない.
0回転のトルクはいわゆる電気モーターの「起動トルク」であり,それが電気モーターの最大トルクとなる.
たとえば起動トルクが1000N・m であっても回転数が0なら出力は
 トルク×回転数×定数=0 kW
である.
逆起電力が顕著になるまではトルクは1000N・mで一定なので,出力は回転数に比例する.

さらに,こうした特性から直流電気モーターの車にはギアは不要である.スピードが遅ければ勝手にトルクがでかく,スピードに乗れば勝手にトルクが小さくなる.チェンジギアなどという不細工な機構はトルクバンドの狭い内燃モーターを効率的に使うためのものなのである.

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