2012年4月17日火曜日

群の単位元


ちょいと暇つぶしに手を動かしてみた.

群は,普通次の公理を採る.
公理
1.(結合律) a(bc)=(ab)c 
2.(単位元の存在) \exist e \forall a (ea=ae=a)
3.(逆元の存在) \forall a \exist a^{-1} (a^{-1}a=aa^{-1}=e)

∃e∀a は「e が存在して,すべての a に対し,以下の条件を満たす」という文を記号にしたもの.
つまり「e が存在して,すべての a に対し,条件 ea=ae=a を満たす」の記号化である.

逆さのA は キタ━━(゜∀゜)━━ッ に使われたりするが,「すべて」で変換すると∀が出てくる.∃は「そんざい」で出る.ヨ(よ)と同じような形だから,あまり使われないけど.

高校数学で出てくる演算構造では,行列の積に当たる.つまり交換律を満たさない.ただし,行列の積では,逆元の存在は任意の行列に保証されない.

群の公理は,こんなに単純なもの.でも,対称なものにはすべて群の構造が入る.
そして,群の構造は,それが入る対称の構造には,対象が何であっても,同じ構造を持つから,その対象を調べる強力な手段となる.
普通,対称というと線対称とか点対称かな.
正多面体などはそれらがいろいろ複雑に絡み合って,その対称性を調べるには群の構造がパワーが強力である.

ガロアはこれを用いて,代数方程式の解の対称性から,5次以上の方程式の解は四則計算と累乗根では表せないことを証明した.


さて,条件をゆるめて,

公理
1.(結合律) a(bc)=(ab)c 
2.(左単位元の存在) \exist e \forall a (ea=a)
3.(左逆元の存在) \forall a \exist a^{-1} (a^{-1}a=e)
を採用しても,右単位元,右逆元が存在することは,他の公理から証明できる.
定理1.(右単位元の存在) \exist e \forall a (ae=a)
定理2.(右逆元の存在) \forall a \exist a^{-1} (aa^{-1}=e)

交換律 ab=ba が公理で要請されていればこれらは明らかだが,普通の群では交換律は成り立たないから,他の公理からの証明を要する.

定理1. \exist e \forall a (ae=a)
証明
左辺=ae
を公理で変形していく.
公理2. ea=a より aea に書き換え,
=(ea)e
と書ける.公理1.から (ea)e=e(ae) なので,括弧を付け替え,
=e(ae)e
後ろの e を公理3 a^{-1}a=e で書き換えると.
=e(a(a^{-1}a))
公理3.a^{-1}a=ea を別の文字で x で書き換えて x^{-1}x=e が成り立つ.そして,xはすべての元だから x=a^{-1} でも成り立ち (a^{-1})^{-1}a^{-1}=e となるから前の e を書き換えると,
=((a^{-1})^{-1}a^{-1})(a(a^{-1}a))
ここから公理1 で括弧を付け替えていく.x=(a^{-1})^{-1}a^{-1}y=az=a^{-1}aと考えて,x(yz)=(xy)z から,
=(((a^{-1})^{-1}a^{-1})a)(a^{-1}a)
さらに左の括弧内で x=(a^{-1})^{-1}y=a^{-1}z=a と考えて,(xy)z=x(yz) から
=((a^{-1})^{-1}(a^{-1}a))(a^{-1}a)
左の括弧内の a^{-1}a は左逆元との演算だから公理3で a^{-1}a=e である.
=((a^{-1})^{-1}e)(a^{-1}a)
x=(a^{-1})^{-1},y=ez=a^{-1}a と考えて,(xy)z=x(yz) から
=(a^{-1})^{-1}(e(a^{-1}a))
e(a^{-1}a) は左単位元との演算だから公理2でe(a^{-1}a) = a^{-1}a である.
=(a^{-1})^{-1}(a^{-1}a)
x(a^{-1})^{-1}y=a^{-1}z=a 考えて,x(yz)=(xy)z から
=((a^{-1})^{-1}a^{-1})a
(a^{-1})^{-1}a^{-1}x=a^{-1}と考えれば,x^{-1}x の形をしていて左逆元との演算だから公理3から x^{-1}x=e より,(a^{-1})^{-1}a^{-1}=e である.
=ea
これは左単位元との演算で公理2から
=a
つまり左辺 = ae = a (これが証明すべきものであった)
これで右単位元も保証された.


定理2.\forall a \exist a^{-1} (aa^{-1}=e)
証明
左辺=aa^{-1}
を公理で変形していく.
公理2から a=ea と書き換える.
=(ea)a^{-1}
公理3.x^{-1}x=ex はすべての元なので,当然 x=a^{-1} でも成り立つから (a^{-1})^{-1}a^{-1}=ee を書き換えると,
=(((a^{-1})^{-1}a^{-1})a)a^{-1}
括弧内で x=(a^{-1})^{-1}y=a^{-1}z=a と考えて (xy)z=x(yz) から
=((a^{-1})^{-1}(a^{-1}a))a^{-1}
a^{-1}a は左逆元との演算で公理2から a^{-1}a=e である
=((a^{-1})^{-1}e)a^{-1}
x=(a^{-1})^{-1}y=ez=a^{-1} と考えて (xy)z=x(yz) から
=(a^{-1})^{-1}(ea^{-1})
ea^{-1} は左単位元との演算で ea^{-1} = a^{-1}
=(a^{-1})^{-1}a^{-1}
これは公理3 x^{-1}x=e において,x= a^{-1} と考えた形をしているので,左逆元との演算であるから
=e
つまり
左辺=aa^{-1}=e (これが証明すべきものであった)
これで右逆元も保証された.

ついでに
定理3 逆元の逆元は元に戻る.すなわち
(a^{-1})^{-1}=a
証明
左辺=(a^{-1})^{-1}
を公理と定理で変形する.単位元との演算は変わらないから,左から
=e(a^{-1})^{-1}
定理2より aa^{-1}=e で書き換えて
=(aa^{-1})(a^{-1})^{-1}
公理1で括弧の付け替えをする.x=ay=a^{-1}z=(a^{-1})^{-1}(xy)z=x(yz) と考えて
=a(a^{-1}(a^{-1})^{-1})
これは定理2 xx^{-1}=e において,x=a^{-1} と考えれば,a^{-1}(a^{-1})^{-1}=e
=ae
定理1により
=a
つまり
左辺=(a^{-1})^{-1}=a (これが証明すべきものであった)
逆元の逆元は元に戻る.


追記:∃ ∀ の順序の間違いを指摘されたので,直しました.ありがとうございました.
単位元e は矢でも鉄砲でもどんな a を持ってきても成り立つとっても「偉い」元
逆元は個々の a ごとに存在する.∃∀の順序の違いはそれを表している.
∃∀のほうが∀∃より条件が強い.

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