2012年2月27日月曜日

アホ大学のバカ学生




タイトルは刺激的だが,内容は大学を取り巻くさまざまな問題点を浮き彫りにしていて,自分のような仕事をしている者には,とても参考になる.
そもそも,著者の一人の石渡氏を知ったのは「最高学府はバカだらけ(光文社新書)」.数年前,出張で飛行機に乗るとき暇つぶしに買ったものだが,これも日ごろ自分の感じていることを真正面からとらえていて「そうそう」「あるある」と思うことばかり.
それどころか,「高校教育も同じだな・・・」
そう思うと,笑ってばかりもいられない.

大学の広報の一環で,教員が高校回りをさせられている実態が挙げられていたが,高校も教員が中学回りをしている.学区内に高校が20校くらいあったと思うが,20校が全部回ったら,中学の先生は20回は相手しないといけない.さらに,隣接学区も受けられるから,隣接市も巡回すると,高校の数は60校以上.
中学回りをすると,大学から訪問を受ける自分の気持ちを考えて,手短にかつ訪問して意味のある会話w

中学生対象の説明イベントも年に2回ほど行っているし,近隣の中学校のイベントにも出向たこともある.やりながら,「大学のやっていることと変わらんな」

本書に,うちの生徒も結構進学する大学が,「学び直し」を前面に出して,ネットでバカにされた話題が出ていた.
自分としては,評価が高い.だって,高校でもいくつかの学校は「学び直し」を行っている.
高校の教育課程は,例えば数学は数Iからスタートするが,学校によっては算数から行う必要がある.自分も20年前,筆算・割り算・比例・分数・小数を授業で教えた.
でも,当時はそういうことは「公然にせず」に,それで数学I の単位の修得であった.つまり教育課程上は,そういうことを高校で授業中に教えてはならないとなっていた.
だから,一応テストでは「展開の公式を書くだけ」の5問程度の問題を出して,「数学I」の修得.
あ,たぶん,今でもそうなっているのではないかな.1年生数学の補習的な数学を3年生の授業に組むことは許されない.(やるなら放課後に集めて・・・でも集まらない)
でも,目の前の「掛け算の筆算」のできない子供に,できるようにして社会に送り出すのは大人の責任だと思う.

一昨年度までは,学力試験無し入試(作文,面接,内申点)で入る生徒が半分程度いたが,昨年度から全員に5教科の学力試験を課すようになった.
新教育課程の「確かな学力」ということもあるだろうが,ぶっちゃけ中学校での学習に対するモチベーション維持の要望からだろう.試験というものは効率よく尻をたたくシステムだ.

小中学校は全欠でも卒業できるため,高校によっては文盲に近い生徒も入ってくる.こういう子は「漫画も読めない」のである.
生徒から漫画を没収するとき,「あぁ,漫画読めるのね」と安心する.

教育課程は,とりあえずそれまでに習ったことを前提に積み重ねるようになっている.
ところが,9割以上の中学生が入る高校では,積み重ねられない子も少なからずいる.
教育課程もそうだが,そうした生徒を救い上げる仕組みになっていない.教育課程上そういう生徒は「存在しないはず」なのだろう.

ところが,そんな子供が大量に高校に進学し,高校で四苦八苦して「やったふり」.で,大学でも,「やったふり」にして,以前話題になった「分数ができない大学生」となる.
大学どころか,社会全体で「できないけどできたことにする教育システム」を容認している.
そして,「最近の若者はうんぬん」と行き着くのであろう.
本書でも明治以降の「最近の若者は」について,いろいろ例がかかれていて,興味深い.

でも,本書に出てくるバカ学生は,褒め言葉の側面がある.先日のイベントで話してもらった自分が担任した卒業生は3人ともそういう意味で「バカ生徒」.
そういうのが「生きる力」なのだなーと思う.

そういえば,
「エジプトのパピルスにも,『最近の若者は』とある」
と,去年会った近所の大学の学長が言っていたのを思い出した.

「最近の若者は」「最近の生徒は」「最近の社会は」「最近の年寄りは」「最近の女は」「最近の男は」「最近の・・・は」と論じるのはいつになっても簡単なのだろう.
そういう愚痴を言わない人間になりたいものだ.

4 件のコメント:

  1. 高校時代の同級生で某私立大学の教授をやってるのが高校回りをさせられているとぼやいておりました。今頃は新入生受け入れ準備でバタバタしているのでしょうね、きっと (^^;;

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    1. 大学全入時代,営業努力は必要ですが,高校訪問にどれだけ意味があるのか疑問です.我々は営業マンの熱意より,大学の学生に対する熱意とか面倒見の良さ,大学時代の学習の雰囲気,出口保証に関心があります.そういうことは,営業が熱弁するより,実際の卒業生の声とか顔つきでわかります.
      つまり,日ごろの教育活動に関心があります.

      その意味で,高校がやっている中学校訪問も「なんだかな」
      ・・・もちろん訪問するからには全力を尽くすわけですが,我々の一番の仕事は目の前の生徒を「育てる」ことに尽きます.
      そのうえで,「うちの学校の様子,教員集団のパワーを見てください」となるべき.

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  2. つい何日か前の新聞に『大学生の4人に1人は「平均」の意味を正しく理解していない。』という記事が載りました。国公立も含んでの数字なので、ニュースにもなるのだと得心が行きます。アホ大学でなくてもこの体たらくです。アホ大学には勉強の出来ない子供を救い上げると言う役目が有りますが、他方勉強ができてもまともな職に就けない時代でもあります。

    あー、済みません。いつも楽しくブログを拝見しています。最近数学ネタが少なくて寂しいです。これからも楽しい数学ネタをよろしくお願い致します。

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    1. >体たらく
      を生み出しているのが,われわれ教員ですね.

      >勉強ができてもまともな職に就けない
      「アホ大学の……」にも例が出ていました.

      >数学ネタ
      尽きてきたかなw

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