2010年5月11日火曜日

代数学の基本定理

代数学の基本定理
「次数が 1 以上の任意の複素係数一変数多項式には複素根が存在する」
ついでにいうと,n次方程式なら根の個数は高々n個.(なぜなら,1つ存在すれば,それによって因数分解でき,次数を1つ下げられる.繰り返し次数を下げれば,n個の1次式の積に因数分解できる.)

例1
$x^2-x-2=0$ の根は x=2, -1 の2個

例2
$x^6-x^3+2x-9=0$ の根は
x= -1.16455 ± 0.717383 i, -0.157794 ± 1.45086 i, 1.32235 ± 0.714184 i
の6個.

例3
$x^5-(1+i)x^4+(1-i)=0$ の根は
x= -0.876861 + 0.261708 i, -0.368144 - 0.808785 i, 0.179315+ 1.12813 i, 0.829944- 0.521752 i, 1.23575+ 0.9407 i
の5個.

さて,根の公式(係数の加減乗除と冪根による根の表示)は4次方程式までしか作れないことが証明されているが,根の存在は別問題である.
どんなに次数が高くても根は存在することを主張するのが,代数学の基本定理である.

定理の「感覚的な」証明.
これには,旧教育課程の複素数平面の知識が必要になる.
それは,複素数 2+3i を座標の (2, 3) に対応させる考え方である.

複素数の積は,平面上の点の回転と拡大(縮小)を伴う.
1+i√3 は座標(1, √3) だからx軸からの 60度のところにあり,原点からの距離は 2である.これを,「偏角60度,絶対値2」と表現する.
√3+i は(√3, 1) だから,偏角 30度,絶対値2である.
この両者をかけると,
(1+i√3)(√3+i) = 4i
これは (0, 4) で縦軸上にあるから偏角90度で,絶対値は4である.
このように複素数の積は,積の絶対値は絶対値の積で,積の偏角は偏角の和になる.

2乗の場合は,2乗の絶対値は絶対値の2乗,2乗の偏角は偏角の2倍になる.
n乗の場合は,n乗の絶対値は絶対値のn乗,n乗の偏角は偏角のn倍になる.

原点を中心とする円上の点は,すべて絶対値が半径に等しいわけだが,この点で表される複素数をn乗すると,絶対値は絶対値のn乗で,偏角は偏角のn倍になるから,やはり円上の点に写る.写る先の円の半径(絶対値)は元の半径のn乗になる.もちろん偏角も変わるが,絶対値はすべて元のn乗だから同じだから,円周上にあることには変わりない.
元の円上を点が1回転する間に, n 乗で写った先は, 元の半径の n 乗の半径の円周上を n回転する.

さて,関数 $f(z)=z^3-2z^2-5z+6$ で円上の点がどのように写るかを考える.

代入する円の半径が100 ならば,$z^3$ で写る円の半径は3乗で1000000 である.
2次以下のそれぞれの項に代入すると,$2z^2$ で写る円の半径は2乗を2倍して20000 であるから,3乗の円に比べれば十分に小さい.
1次の項で写る円の半径は500 だから,さらに影響はない.
このように,代入する円の半径が十分に大きければ,$f(z)=z^3-2z^2-5z+6$ の描く図は,ほとんど $f(z)=z^3$ の描く円に近くなる.

さて,ここで f(0)=6 である.つまり原点を代入して写る先は,点(6, 0)である.

f(z) は連続関数だから,元の円の半径を 0 から 100 に変化させれば,f(z) で写る先は,1点 (6, 0) から半径が1000000 のだいたい円まで連続的に変化する.
ということは,その間に,f(z)=0 (原点) を少なくとも1回は横切るはずである.
その横切る元の円上の点を αとすれば,
f(α)=0
を満たすので,αは根の一つである.
よって,必ず根が存在するといえる.


関数 $f(z)=z^3-2z^2-5z+6$

半径0.1 の青い円は,6 を中心とする半径 0.5 のほぼ円に写る.つまり,z^3 の項は半径0.001,z^2の項は半径0.01の円に写るから影響は少なく,ほぼ -5z+6 によって写される曲線 「半径 0.5 のほぼ円」に写る.


半径を大きくするといろいろな形に変化.
半径2 の青い円の写る先は,次のようになる.


青い円の半径を100にすると,巨大なほぼ円に写る.


1点6から,巨大なほぼ円に変化する間に,必ず原点0を1回は横切る.
この関数の場合は3回横切っている.>定理の絵

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